6週連続「ゼルダの伝説」懐かし企画の第3回目となる今回、『リンクの冒険』の開発に携わった、ある社内開発者にインタビューを敢行してきました。
シリーズの中でも、異色なゲーム性になっている訳をどうしても知りたいと思ったからです。
その開発者というのは・・・当時『リンクの冒険』のディレクターだった、杉山直さんです。
◆杉山 直(すぎやま ただし)さん プロフィール
性格:気持ちは若い!
趣味:自転車、登山
好きな食べ物:ラーメン
これまでに手がけた主なタイトルは、『リンクの冒険』をはじめ、『スーパーマリオカート』、『マリオカート64』、『F-ZERO X』、『Wii Fit』、『スティールダイバー』など、多数。
おそらくみなさんも思っているであろう疑問を私が代わりに聞いてきました。Q&A形式にまとめましたので、さっそくどうぞ。
Q1:『リンクの冒険』は、「ゼルダの伝説」シリーズでも異色のゲーム性になっていると思いますが、当時どのようにして開発が始まったんですか?
「攻撃も防御も上下に使い分ける横スクロールのアクションゲームを作りたい」という宮本(茂)さんの一言から始まりました。1作目ではできなかった、ジャンプ突き、下突き、上下の盾防御などのアクションをできるようにしたいということが根本となっています。当初は1作目の続編というより、新しい剣と盾の遊びとして上下使い分けの手応えを実験しながら制作していたので、1作目のシステムはあまり意識していませんでした。シリーズで異色の存在と言われているのは、もともと別の遊び方を模索していた、言わば「外伝」だったからなんです。最終的には、ストーリーやリンクが16歳だといった設定を加え、『THE LEGEND OF ZELDA 2』と付けて、シリーズ2作目として出しましたが。
Q2:当時の開発の現場はどんな感じだったんですか?
正直30年も前のことで、覚えていることのほうが少ないんですが・・・(苦笑)。当時は1つのタイトルを10人くらいで開発していました。今とはとても比べられないくらい少ない人数です。開発期間は、当時のソフトの中で『リンクの冒険』はかなり長めに時間をかけたと思います。資料はすべて紙ベースでやりとりしていたのが、今となっては懐かしいです。
Q3: なぜ『リンクの冒険』というタイトル名になったのですか?
ゲーム内容を表す一言として『リンクの冒険』とすんなり決まったような・・・(忘れました)。1作目が『ゼルダの伝説』でしたが、当時はタイトル名に『~の伝説』や『~の冒険』といった物語的なタイトルが少なかったのでそのように決めたようにも思います。
Q4:私は敵とのバトルにすごく苦しめられたのですが、当時のプレイヤーには、これくらい難しくて当たり前だったんですか?
難しいでしょ?(笑) 当時のアクションゲームは基本、みんな難しかったような気がします。ボリュームも少なめの時代でしたから、できるだけ長く遊んでもらうため、あっさりクリアできない感じにはなっていましたね。デバッグ作業も含めてすべて自分たちでやっていたからか、ゲームをやりすぎて難易度に対する感覚が自分たちが面白いと思える高めの難易度になってしまった、というのはありますね。
ひとつ覚えているのが、当時お客さまからの電話で、「最後のボスがどうしても倒せない」と問い合わせがありました。よくよく話を聞いてみるとすでにフル装備の状態に到達していました。ということは、もう自分の腕前のみでクリアしていただくしか方法がないので、すごく答えづらかったですね。その方はお子さんのためにプレイしていたみたいで・・・申し訳なくなりました。
Q5:リンクがレベルアップしたり、シンボルエンカウントで敵に遭遇したりするのは『リンクの冒険』にしかない特徴だと思いますが、どのような経緯でそうなったのでしょうか?
たしか、当時いろいろと制限がある中で、何回も敵と戦ってもらえるように、レベルアップできる要素を入れたのではないかと思います。シンボルエンカウントについては、フィールドマップも狭かったので、運の要素も出るようにこの方式にしたと思います。
Q6:『リンクの冒険』の中で、後の「ゼルダの伝説」シリーズに影響を与えたようなことは何か思い当たることはありますか?
私はその後のシリーズには直接関わっていませんが、例えば、『リンクの冒険』に出てくる町の名前は、後のキャラクターの名前になっていたりします(サリアの町、ルトの町、ラウルの町など)。あとは、ジャンプ突きや下突きなどの攻撃方法など剣のアクション要素には、『リンクの冒険』の影響もあるんじゃないのかなと思います。
Q7:最後に、「ゼルダの伝説」シリーズでも、『リンクの冒険』が好きだ!という異色のファンへメッセージをお願いできますか?
そんな人いるんですか!?(笑)
というのは冗談で、そう言ってもらえるとすごくありがたいですね。作り手としては、そこまでやり込んでもらえてうれしい限りです。本当にありがとうございます。発売から30年たちますが、これからも『リンクの冒険』をよろしくお願いします!
ということで若輩者のぶしつけな質問に対しても、30年前を思い出しつつ、一つ一つ丁寧にお答えいただけました。杉山さん、本当にありがとうございました。一人の人間として、これくらい広い心でありたいと思いました。
みなさんの疑問も少しは解消されたのではないでしょうか?
それでは、また次回お会いしましょう。