Hello! SOEJIMA & BOKU です。
今回は、4月に発売された『スーパー野田ゲーPARTY』 の開発者、野田クリスタルさんにゲーム開発に関するインタビューを行いました。さらに、8月19日にアップデートで追加される2本のゲームについても野田さんからコメントをいただきましたので、ぜひご覧ください。
芸人でありゲーム開発者でもあるがゆえの苦悩
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野田クリスタルさん:吉本興業所属のお笑い芸人兼ゲーム開発者。「マヂカルラブリー」のボケ担当。
野田さん、こんにちは。
野田さんはもともと個人でゲーム開発されていたんですよね。きっかけはなんだったのでしょうか?
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もともとゲームは大好きでよくやっていました。
お笑いライブで漫才以外のもので笑いを取れというステージがあって、そこで「ゲーム」を作って見せたら面白いかもと思ったのがきっかけでした。
もともとゲームのプログラミングは一切知らなかったのでしょうか?
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そうですね、全て独学ではじめました。
プログラミング言語を調べる中で「HSP(Hot Soup Processor)」という開発言語にたどり着きました。わからないことはとにかく掲示板を使って、HSPの開発者さんに聞きまくっていましたね。今となっては、自分のリクエストで、HSP自体にアップデートが入ることもあるくらいです。
開発言語の開発者さんとそこまでの関係になるなんて! 最初はどんなものを作っていたのでしょうか?
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ブロックくずしから始めましたね。あれにはゲームの根本全て詰まっていると聞いたので。
ですが、最初は見つけたソースコードを見ても、何がどう動いているのか本当にわかりませんでした。なので、ソースコードをそのままコピペして、とりあえず真ん中にキャラクター(デッカちゃん)を置いて操作できるようにしたのが、「ブロックくずして」の始まりでした。
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自動で動くブロック崩しに当たらないように、芸人「デッカチャン」を動かすゲーム。
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ボールが当たるとデッカチャンが2倍になる、という仕様だったのですが……3回目にあたると次の4回目は絶対避けきれないんですよね。ライフが4つあるのですが、実質3つなんです。これって普通は「理不尽なバグ」なんですけど、お笑いの畳みかけと似たしくみになったんですよね。これは面白いと思い残しました。
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避けきれない4回目
笑える方が優先されるんですね。
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そうですね、多少理不尽でも笑える方がいいんですよね。
ゲーマーとしてゲーム性で面白い方を追求したい気持ちもあるのですが、芸人としてツッコミどころがあったり笑えたりする方を仕様として残してます。
ただやっぱりゲームなんで。ゲーム性で笑いを取りたいと思うわけですよ。セリフ回しで笑いを取るのは漫才など他でもできるので、あくまで「ゲーム」にこだわりたいなと。
例えば「将棋Ⅱ」では、コマを選択するまでその動きがわからないし、お互いどれが王将なのかもわからないルールですが、だからこそどっちが勝つかわからないし、一瞬で勝敗が決まることもある。
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これを、例えば自分の王将だけはわかるようにすると、競技になってしまうんです。
強い人に勝てないガチなゲームになっちゃいますからね。
もちろんゲームとして面白いのはそっちなんでしょうけど、「野田ゲー」としての面白さを追求するとこれは違うなと。ただこのあたりはいまだに迷いますね~。
芸人の方ならではの、ゲーム開発の悩みですね。
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あとはテンポ感も大事ですね。もともとお笑いライブ用に作っていたというのもあるんですが、自分のゲームがテレビ番組で扱われたり、実況されたりすることも考えてます。
長いチュートリアルやストーリーの説明が入ると、やっぱりみなさん読んじゃいますからね。そこは最小限に抑えて、すぐにゲームを遊べるというのを意識してます。
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本作もタイトル画面から3回ボタンを押すだけで、もう「つり革」が遊べますもんね。
ちなみに……ライブではゲームを使ったネタってウケるのでしょうか?
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正直、漫才よりも打率は高いんですよね(笑)。
ただ、ゲームネタは経費がかかるんです。大きいディスプレイを借りて、ライブ会場に搬入しないといけないんですよ。
確かに!
2000人と作ったゲーム
今回の「野田ゲー」開発のきっかけはなんだったのでしょうか?
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「何かゲームを作ろう」という話を、今回一緒に開発をしたカヤック(※1)さんとしていまして……でも資金がないからクラウドファンディング(※2)で集めることにしました。
でも、ただお金を集めるだけでは面白くないな~ということで、リターンとしてゲーム内に少しだけ関われるようにしたんです。
例えば、「あなたが描いたイラストや落書きがどこかに使用される権」や「あなたのペットが出演できる権」などですね。
※1 面白法人カヤック:コンテンツ事業を中心に展開。本作では吉本興業のパートナーとして、企画提案から開発まで共に制作を進めた。
※2 クラウドファンディング:企画やアイデアを実現するために、インターネットを介して不特定多数の方から資金を集めること。資金を提供する人(出資者)は、その見返り(リターン)としてモノやサービスを得ることもあります。
今回約2000人もの出資者から、素材が集まったんですよね。
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色んなリターンを用意したのですが、おかげさまで多くの方に出資いただいて素材が集まりました。でも、何をつくるか決める前に素材を募集してしまったので、開発にはめちゃくちゃ苦労しましたね。……これは正直、凡ミスでした。
だって、作れるゲームの本数より「主人公になれる権利」で集まった主人公の方が多かったんです。これどうしよう!って感じでした。
一同(笑)。
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「この人は将棋の棋士っぽい」という印象から「将棋Ⅱ」で登場。
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「この人はバスに乗るのが好きそう」だから「次おります早押しバス」で登場。
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「この人は固い意志がありそう」だから「太ももが鉄のように硬い男てつじ」で登場。
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イラストや画像も何百個と集まってしまって。だからこそ、ゲームのアイデアを出すときに、それらをいかに“活用するか”という制限が発生しました。
そこから、「将棋II」で駒の種類を増やしたらイラストをめちゃめちゃ使えるな~とか。ペットの動物画像を使うには……「干支レース」がいいかな~とか。音声だったら……「音声衰弱」とかいいかも、とか。
まるで「モノボケ」みたいな開発ですよね。素材をたくさん使う方法が、アイデアの基になっているものがいくつかありました。
制限があったことで、アイデアが生まれたんですね。ゲームジャム(※3)の作り方にも似てますね。
※3 ゲームジャム:決まった時間内でゲームを開発するイベントのこと。数人で、24~48時間くらいで行うことが多い。メンバーもテーマも前もって知らされないことがほとんど。時間が限られているからこそ、新しいアイデアのゲームが生まれやすいという一面も。
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そのシステムで一度作ったことがありましたね。
「相方」を使ったゲームを1時間以内で作る、というのを配信しながらやりました。
そこで出来たのが「痩せちゃうよゲーム」と言って、散らばったご飯を相方の口元に運んで痩せないようにするゲームでした。
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「痩せちゃうよゲーム」
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ご飯の初期位置をランダムにしたら、最初から全部口元に集まっていたことがあって。その時はウケましたね。これもまさに、制限によって生まれたゲームでした。
ぜひ一度プレイしてみたいです(笑)。
それにしても、関わった出資者の方々は自分の素材がゲーム中に出てきて、嬉しかったのではないでしょうか?
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出資者にとっては賭けだったと思います。そもそも、ちゃんとゲームとして成功するかわからないプロジェクトだったと思いますよ。
しかも、普通のクラウドファンディングって、お金をもらう代わりに、ゲームの完成品+何かをあげることが多いのですが……僕らは、お金をもらって、素材を作ってもらって、さらにゲームの完成品を買ってもらってますから。
確かテストプレイも手伝ってもらったんですよね。
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「テストプレイをリモートで見ながら、ゲームのダメ出しができる権」では、開発中のゲームプレイをZoomの画面越しに見てもらったりもしてました。自分たちがゲームに感じていたことを、ユーザーたちもコメントしてくれていたので、開発の自信に繋がりましたね。
支援というより、一緒に作っている感覚が強いプロジェクトだったでしょうね。
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まさに、参加してもらった2000人と作ったゲームだと思います。
ボケのつもりで作った長すぎるエンドロールも、いざ開発も終わって見てみると……感動しましたね。
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出資者や関係者2000人分の名前が、9分以上かけて流れます。
「野田クリスタル、動きます」
本作はアップデートが8月19日に配信されるんですよね。
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「漫才王」で、皆様に漫才の登場がどれほど難しいか、味わっていただきたいです。
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漫才師を引っぱって飛ばし、出囃子が終わるまでに舞台に立たせるゲームです。
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そして「人面ニャ」ですが、誰も見た事が無いゲームが完成しました。これは革命です!
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帰省中の主人公が、謎のキャラ「人面ニャ」のいる実家から脱出を目指すアドベンチャーゲームです。
追加のゲームも面白そうですね。
そういえば、もともと100近くのネタがあったと聞きました。
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はい、カヤックの方々と一緒に、ネタ出しをずっとしていましたね。
ボツになったネタもいくつかありました。
手動でやる『リングフィット アドベンチャー』みたいな筋トレゲームとかね。
「スクワットしてください」とただ言ってくるだけっていう。
あとは、モルックを題材にした『みんモル(みんなのモルック)』とかもありました。
一同(笑)。
没ネタも見てみたいですね。そうなると、次作は考えていますか?
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「野田クリスタル、動きます」
(どこかで聞いたことあるフレーズが…!)
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まだ詳細は言えませんが……次は10倍の20000人で作りたいですね。
ユーザーから今度はどんな素材が届くか楽しみです。
次作も楽しみにしています!
それでは、最後に一言お願いします。
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僕はもともと、少人数で作られているようなインディーゲームの、開発者の個性や味、世界観が好きなんですよね。
本作の開発は、本当にお金の無い少人数チームが、ユーザーを巻き込みながら進めたものでした。今回のような企画が成功していくことで、インディーゲームの開発者たちにも希望になるんじゃないかなと思ってます。
野田クリスタルさん、ありがとうございました。
それではみなさん、よいインディーライフを!
©YOSHIMOTO KOGYO CO., LTD.