開発者に訊きました『Xenoblade3(ゼノブレイド3)』 株式会社モノリスソフト 取締役 高橋 哲哉 株式会社モノリスソフト プロデューサー、ディレクター 小島 幸 企画制作部 第2プロダクションG 横田 弦紀

2022.7.28

感染症対策を行い、十分な距離を保ってインタビューをしています。

本記事では、レーティングがCERO C(15歳以上推奨)のタイトルを紹介しています。

物量が好き

さて、今作の世界の成り立ちや、それを支えるこだわりについてはよく理解できました。そこでひとつお訊きしたいのですが、モノリスソフトさんは、まずストーリーを固めてからあそびの部分を工夫されているのか、それとも、つくりたいあそびが先にあって、そのためのストーリーを考えられているのか、どちらなのでしょうか。

小島

軸はストーリーです。
高橋さんの考える物語や世界があって、
それをお客さまが手に取れるものとして開発する。

もちろん、高橋さんからあそびの提案もあるので
そういうのは極力、仕様に落とし込みます。
それに加えて、シナリオをスタッフ全員で読み込んで、
「笛を吹く主人公がいるから、笛を使ったあそびを入れよう。」
というように、ストーリーを土台にしながら世界を膨らませて、
あそびの形につくり込んでいきます。

そのつくり方は、昔から変わっていないのでしょうか。

高橋

変わらないですね。
ただ、僕の中ではどちらが先というより
同時進行だと思っている部分も大きいですよ。

1作目も2作目も、世界や物語づくりと同時に、
それに合ったあそびを提案して、並行してつくっていました。

・・・とはいえ、やっぱりストーリーが軸ですかね。
なぜかというと、RPGをつくるには
全体の物量を最初に決めなきゃいけないからです。
メインのストーリー部分が何時間、キャラクターが何人、マップが何個・・・と、
ある程度、最初に決める必要があるんです。

「ゼノブレイド」はシリーズ全体を通して、結構な物量があるように思います。それをある程度、最初から決めてつくり始めるんですね。

高橋

ひとによって「物量が多い」の感覚は違うと思うんですけど、
僕は結局、物量が好きな人間で。

横田

僕も好きです、物量!

高橋

小島さんはいつも「物量を減らしてくれ」って言うんですけど(笑)。

横田

僕も、立場的には良い落としどころを見つけなければならなくて。

高橋

RPGはある程度の物量が必要なジャンルで、
プレイに必要とされている最低限の物量というものがあります。
そこは最初に担保しつつ、
それから「あれもやりたい」「これもやりたい」を乗せていった結果、
こういう感じになるのかなあ、と。

モノリスソフトの開発スタッフの皆さんは、物量を増やしていくことへの理解があるということですね?

小島

いや・・・その理解は無い・・・と思いますけどねえ(笑)。

一同

(笑)。

小島

ただ、立場上「減らしてください」とは言いますけど、
結局僕も大好きなんですよ、物量。
それに、フィールドとクエストを担当した者も、
物量が大好きなんです。
となると、つくっている人間が物量好きばかりなので、
必然的に増えていくというのはあると思います。

ただし、無作為に増やしているのではなく、
必要性があって増えていますね。
高橋さんの描きたい世界をつくるには、
ある程度の量のものをつくり込まないと説得力が出てこなくて。

映画なら、2時間に凝縮して説得力のある世界を描けるんですけど、
ゲームだと、ある程度自由に歩き回れたりしますよね。
キャラクターが地続きで歩いていく場所には、広さも要りますし、
そこで戦争が起きているとなったら、
そこには普段はどんな人たちが、どういう暮らしをしているのか
という設定も組み込む必要がある。

それを全部つくっていくと、
自然と「物量」が増えてしまうんですよね。

ということは、モノリスソフトの皆さんは「物量が好き」ということですね。

高橋

それはあると思いますね(笑)。
ただ、「物量」と一口で言っても、
「ゼノブレイド」でつくっている物量は
「工夫の物量」かな、とも思っています。
あそんでくれたお客さまに伝わりやすい、
RPGとして求められる物量は何か、という意味で取捨選択しています。

例えば、マップやキャラクターの細かい部分にこだわって、
たくさんのバリエーションをつくったり、
状況ごとに異なるアニメーションをつくったりしたとしましょう。
それはそれで楽しんでいただけると思うんですけど、
結局は30分もプレイすれば慣れてしまうと思うんです。

そうでない部分で、より大きいリターンが得られるものは何か、
常に模索し、工夫したうえで物量の調整をしています。

小島

・・・いや、高橋さんはマップやキャラのバリエーションも無数に欲しいはずですよ、本当は(笑)。

一同

(笑)。

横田

何を優先させるか、ですよね。
今回は1と2の融合というテーマなので
1作目と2作目、足して単純に2倍の物量にはできないんですけど、
3作目にふさわしい物量は必要、という考えがベースにありました。

その結果・・・
1作目、2作目よりボリュームとしては多くなったと思います(笑)。
シナリオも2作目よりほんの少しボリュームを減らすつもりだったんですけど
本編だけでなく脇道にもいろんな仕掛けを、と思ってやりたいことを
詰め込んだら、結果的に少し多くなりましたし。

小島

まあ・・・物量に関しては、多いのは3作目までにしたいですかね・・・!

でも、それは2作目の時にもそう思っていたのでは・・・?

小島

そ、それは・・・その通りです(笑)。
そういえば昨日、ちょうどその話を社内でしていて。
今回はフィールドもめちゃくちゃ広いんじゃないかと。

それで、実際に計算してみたら
歩ける場所は2のフィールドの5倍以上もあって・・・。
なんか・・・「やっばい!」って感じでした(笑)。

一同

(笑)。

小島

でも、先ほどもマップやキャラのバリエーションの話をしましたけど、
これだけの面積のものを、ある程度限られた景観のバリエーションで
自然につくり切れているというのは、
モノリスソフトのマップづくりにいろんなノウハウが
蓄積されてきているんだな、と思います。

例えば壁のパターンを無数に用意すれば
景観のバリエーションは簡単につくれますが
そうではない方法で工夫している、ということなので。

実際、探索要素やクエストが楽しめるコロニーの数は
たくさんご用意できていますし、
壁のパターンのような細かすぎるバリエーションを
増やす方向に力をかけすぎてしまうと、
逆にこれだけのあそびは用意できなかったんじゃないかな、と思います。

横田

「街の数を増やしたい」って話も当初からあったので、
工夫で増やせてよかった、と思います。

高橋

鉄巨神という巨大なコロニーを表現しなければいけないとか、
ウロボロスという、5~6メートルのキャラクターが
同時にバトルしなければならないとか。
そういったところを含めて、ある程度広さが必要という条件もありました。

横田

鉄巨神は本当に巨大なので、フィールドの中で見上げてみてほしいですね。
僕もたまに、鉄巨神どこにあったかなって見上げてみると
「うわ!めちゃくちゃでかい!」って。
いまだに驚きます(笑)。

横田

まさに「ゼノブレイド感」があるところなので、ぜひ見てほしいです。

遠くまで抜けた感じのあるフィールドは、「ゼノブレイドらしさ」のように感じます。
フィールドといえば、今作では次の目的地が指し示される、ガイド機能がありますが、これを今作で盛り込むことになった経緯もお伺いできますか。

高橋

一番は、わかりやすさですね。
とくに2作目では、単に平面の地形を歩くだけではなく、
高低差があったので、目標とする場所が
非常にわかりづらく感じる場面がありました。

試行錯誤も必要ですが、迷いすぎると
どうしてもストレスを感じてしまうので、
いい方法はないだろうか・・・ということで、
今回は「動画ナビゲート」というガイド機能を選択肢として用意しました。

『ゼノブレイドクロス』のときにも、
動画ナビゲーションボール」という、
同じような仕組みを用意していたんですけど、
まだまだわかりづらいという声もありました。

ただ、ガイドの仕組みは本当にガイド通りにしか進まなくなって、
脇道にもっと面白いあそびがあるのに、
そういうところを見てもらえないのではないか
という懸念が、個人的にあったんですけど・・・。

小島

過去作で「迷った」というご意見を目にしていて、
「今回こそは、お客さまにそういう想いをしてほしくない。」
という意地がありました。

高橋さんも言いましたけど、ガイドを入れると
どうしてもその通りに進んでしまうので、
「本当に入れるべきか?」ということは、横田さんともよく相談しました。

横田さんは、任天堂の視点で、ガイドを入れるべきと判断されたのでしょうか。

横田

任天堂側も、同じ懸念をもっていました。
寄り道して欲しいのに、寄り道しなくなってしまうんじゃないかって。

でも、本編を早く進めたいという方の
要望にも応えられるようにすべきだと思いました。

ちなみに、ガイドは単に目的地が指し示されるだけでなく
画像目的地に光の柱が出て、遠くからでも探しやすくする
という見せ方もしています。

おお、これはわかりやすいですね。ですが逆に言えば、こうして次の目的地が指し示されていると、どこが寄り道なのかもわかりやすくなるように思います。それに、寄り道をしても、戻ってきやすそうです。

横田

この「ナビゲート」はいつでもONとOFFを切り替えることができます。
不要であればOFFにもできるので、
探索を自分でじっくり楽しみたいという方は、
切り替えてあそんでもらえたらと思います。

高橋

ちなみに、脇道にはいろんなあそびが配置されていて、
そこをあそぶことで、より『ゼノブレイド3』の世界に
没入できるようになっています。

小島

たくさん用意したコロニーについても、
ガイドされる本編では通らないところがけっこうあります。
実は「ヒーロー」も、そんな脇道に結構いまして・・・
なので、ぜひ脇道にそれて探索してみてほしいですね。

そういえば、公式サイトでも紹介されていましたが、「ヒーロー」というのはどのような存在なのでしょうか。

横田

はい。
今作は先ほどお伝えしたように
「6人」パーティが基本なのですが、
7人目のメンバーとして共に戦ってくれる、画像ヒーローという存在がいます
その名のとおり、この世界で名を馳せる
強い存在で、ノアたちにとって頼りになる味方です。

6人全員がつねにバトルに参加するとなると、
パーティメンバーを入れ替える、という
前作にあった要素や楽しさがなくなってしまうという話になって。
今作では複数いるヒーローから、好きなキャラを一人連れていけます。

小島

登場するヒーローのうち、3分の1ぐらいは
メインのシナリオをあそんでいく過程で出会えると思います。
でも多くは、寄り道をして、コロニーの物語に介入しないと
出会えなかったりします。

このヒーロー、本当に一人ひとり、頑張ってつくってあるので、
ぜひぜひ、そのお話も楽しんでいただきたいです。
ヒーローを仲間にすると、ヒーローの技や衣装を
ノアたちが身に付けることができるようにもなるので、
戦い方だけでなくビジュアルも変えられるようになります。
ある意味、ここが一番ゲームらしい要素かもしれないですね。

ということは・・・やっぱり脇道こそ面白いってことでしょうか?

横田

・・・どっちもオススメです(笑)!

ほかに、初めてプレイされる方へ、配慮されたことはありますか?

高橋

「訓練」ですかね。
これは、自信を持っておすすめできる要素です。
今回は各キャラクターの技はもちろん、コンボや、クラスチェンジなど、
戦い方のバリエーションが多いので、
動画そのひとつひとつを、お題をクリアしていきながら
段階的に習得できるような場所
をつくっています。

本編プレイ中でも、
「あの技はどうやって出すんだったっけ?」
と忘れてしまったときに、
いつでもメニュー画面から訓練に切り替えて
使いたい技や仕様を選んで練習し、
すぐに本編に戻ってくることができます。

今回はとにかくそういう初めての方が
迷わずにすむ仕組みをしっかり作ろう、
と工夫しました。

確かにこういう要素があれば、一度中断して再開した時に分からなくなって諦める、ということもなさそうです。

高橋

動画Tipsの表示で、新しい技やアイテムが入ってくると
その使い方の説明はされるんですけど、
それだと、どうしても文字情報が多くなってしまいます。

でも、やっぱり文字情報だけじゃなくて、
実際に手触りで理解してもらうものが必要だなということで
実装した仕様なので、
初めての方に安心してもらいたい、一番おすすめしたい点ですね。

ありがとうございます。ここまでのお話で、シリーズ3作目ではあるものの、初めての方が3作目からプレイしても大丈夫だということがわかりました。
それでは最後に、みなさんが考える今作の見どころや、おすすめのあそび方などを、ひとことずついただけますか。

横田

はい。まず僕からは、バトルについて。
一画面に7人もいて、どうしても見た目にとっつきにくいと
思う人もいるかもしれませんが、
そこは安心して試してほしいです。

チュートリアルや訓練もありますが、
ストーリーを追っていけば自然とわかっていける部分もあると思いますし、
逆に7人いるので、ちょっと失敗しても、
ほかの6人が頑張って戦ってくれるので・・・(笑)。

それに、「オートバトル」といって、
多くの戦闘中に操作キャラクターが自動で攻撃してくれる機能もありますので、
道中にもし難しいと感じられたら、使っていただければと思います。

ぜひ、「キャラクターやストーリーは気になるけど、
バトルが難しそう・・・」っていう方にも、
今作から手にとってみてほしいなと思います。

小島

僕はストーリーが本当におすすめです。
1、2、3作目とやってきて、高橋さんが一番やりたいことができている
ストーリーじゃないかなと思っているので、
ぜひ体験していただきたいです。

とくに主人公と同じ世代の人に
ぜひやってみてほしいです!

それから、
ウロボロスのバトルシステムは、とくに苦労しました。
高橋さんからのオーダーが、「いつでもウロボロスになれて、
いつでもウロボロスから戻れるように」だったんですが、
ウロボロスって、ものすごく強い存在なんですよ。

だから、本当は最初はウロボロスになれないっていう制限をかけたうえで、
最後にウロボロスになってとどめを・・・としたいわけです。
でも「バトルがはじまってすぐなれなきゃ、違うから!」ってことで、
なんとかそれをゲームシステムに入れ込んで。

でも、結果的にそうすることで、
すぐにウロボロスになって、サクサク進むもよし、
しっかり狙いどころでウロボロスになるもよし。
バトルが苦手な方も救われるし、
バトルに違う楽しみが生まれるように
落とし込めたんじゃないかなと思います。

高橋

「集大成」とか、「一区切り」、「総括」という話をしましたが、
「ゼノブレイド」シリーズの開発開始から、およそ15年。
これまで僕らがやってきたことのすべてというか、
それらの答えが詰まっているものになったのではないかと思っています。

同時に今作の中でいろんな新しい挑戦もして、
今後モノリスソフトが目指したいものの片鱗も、
それとなく入れられたのではないかと思っています。
なので、プレイすることで、
モノリスソフトの未来のゲームの形を想像していただくのもいいかなと思います。

また、シリーズ3作目ですけど、
もちろんこのタイトル単体でも十分楽しめるようになっています。
初めての方も、これまでずっとあそんでくれた方も、
一緒に楽しんでいただけるものになっていると思います。
ぜひプレイしてみてください。

横田

プレイしていただいた後のお話になりますが、
追加のエキスパンション・パスもご用意しています。

そのエキスパンション・パスの最後には、
新たなストーリーも追加するんですけど、
『ゼノブレイド2 黄金の国イーラ』のようなボリュームで考えています。
あれがよかったと思ってくださった方はもちろん、
初めての方にもぜひ、手にとっていただきたいと思っています。

損はさせないボリューム・・・って、また物量の話ですけど(笑)。

小島

僕はエキスパンション・パスの開発に参加できてはいないんですけど、
横から見ていてホントに楽しそうな内容なので、
ちょっと悔しいんですよ(笑)。
ぜひ、楽しみにしていただければと思います。

最後に、横田さんにお訊きします。シリーズ「集大成」という言葉がありましたけど、「ゼノブレイド」シリーズはまだまだ続きますよね?

横田

はい、続きます! できる限り続けたいです・・・!

ありがとうございました。