続編でありながら、さまざまな新しいものが詰まっているということで、
前作では「ゼルダのアタリマエを見直す」というテーマでしたが、 今作では「続編のアタリマエを見直す」になっているように感じました。そうですね、話していて気づいたんですけど、
もし、全然違うフィールドでゼロからつくっていたら、 マップが違うだけで前作と同じような遊び心地のゲームが できてしまっていたかもしれません。たしかにそのとおりで、
例えば「主人公の能力」と「多彩なフィールド」を掛け合わせると 「人によって毎回違う体験」が生まれるだろう、という考え方です。
「毎回違う体験」は続編でも絶対に変えたくない、 「多彩なフィールド」も変えない、となると おのずと「主人公の能力」を変えて新しくしよう、ということになります。
だから今回は、リンクの能力を完全に刷新しました。
たしかに、動画先日の青沼さんのプレイ映像で紹介されていた リンクの能力は、前作とは違うまったく新しいものでした。 ただ、「完全に刷新」ということは、 ひょっとして全部異なっていたりするのでしょうか?
すべて一新されています。
前と同じと思ったら大間違いですよ(笑)。
中でも特に今作の特長のひとつである モノとモノを「つなげる」遊びは、開発の初期に 藤林さんが「続編でやりたい遊びはこれです!」といって 持ち込んできたものです。
あのときは、動画前作の仕組みとパーツだけで 「乗り物」を試作してプレゼンしましたね。
回転する4つの歯車をタイヤに見立てて板につけて車をつくったり、 その自動で回る歯車に板をくっつけて外輪船にしたり。
あとは、石板を組み合わせて筒にして、 リモコンバクダンを使って古代球を飛ばせる大砲をつくって、 車と合わせて戦車にしたりもしました(笑)。
そうやって、もしリンクに「つなげる能力」があったら、 今ある材料だけでもこんな新しい遊びができますよ、って 提案したのが、 今作の動画「ウルトラハンドで乗り物をつくる」の始まりでしたね。
なるほど、「モノを組み合わせて何かをつくる」
というアイデアは開発の最初からあったのですね。 青沼さんのプレイ動画を見ていても、 「こう組み合わせたらこんなことができる」というのが、 とても直感的でわかりやすかったです。モノとモノの組み合わせは、パターンの量も多いので
デザイナーやプログラマーたちが 調整にすごく力をいれた部分ですね。 お客さまには、ぜひいろいろと試してもらって、 お気に入りの組み合わせを見つけてほしいです。モノをくっつける「ウルトラハンド」だけでなく、
担当スタッフたちはお客さまに 「こうなると思ったのに、ならないじゃん・・・」と ガッカリさせることがないように、 アイテム個別に専用の調整をいれて、がんばりました。
おかげでスクラビルドでつくれる魅力的な武器も たくさん生まれました。
画像例えば「死神の大鎌」みたいな槍がつくれたりしますよ。
でも、くっついたモノ同士のところを見ると、画像接着剤みたいなのがハミ出てたでしょ? 最初は「え!? この見た目でホントにいくの!?」 って、驚きました(笑)。
なんか今、若干怒られたような気がしたんですけど・・・!?
いや、でもくっついているのか、くっついていないのか、 一番わかりやすい表現って、たぶんアレですよ。
自信あります(笑)。
その接着剤風の表現、音をつける側としても
「ゼルダ」って、実際にはない抽象的な音よりも、 現実世界に即した手触り感や手ごたえ感のある、 いわば「泥臭い」印象の音のほうが合うことが多いんです。
今作でもゲーム中で何度もくっつけて、外して、 というのを繰り返すので 「あ、今、くっつけられる状態になった!」って、 機能的にうまく伝える必要がありました。
だから、「くっつく音」はモノにかかわらず、常に同じ音が鳴ります。
何度も聞く音なので、純粋にその作業が楽しいと思えるような 手ごたえ感を出すのがキモだと思っていました。
そうやって見た目が決まって、効果音がつくと、
モノとモノがくっつく瞬間の手ごたえが出て すごく気持ちよくなりましたよね。そう、なんだかんだで、
最後には気持ちよく感じるんだよね。もともとこの遊びは、何かをしっかりつくるというより、
そういう意味で、接着剤は 「くっつける遊び」の象徴にもなっていると思います。
適当にくっつけても、 何だかいい感じの手づくり感を醸(かも)し出してくれますし(笑)。
そう、だから、モノをつくるのが不得意な方でも全然心配はいりません。
単純に「長いものを2つ繋いだらもっと長くなった!」 っていう遊びなので。
ちょっと見た目が不格好かもしれないけど、 「接着剤でくっついてるから」って、 理屈がストレートにわかる(笑)。
そういうところが「ゼルダっぽい」し、気に入っています。
でも青沼さん、そのわりには
ちょっと形状を小粋にアレンジしたりして・・・(笑)。
あの場所は、ゲームの序盤で通るところですけど、 別にそこまでしなくても渡れるし、 なんならイカダをつくらなくても渡れますよ。
いやー、そこはさ、ゲームの特長をお伝えする映像だし・・・
それに、せっかくだから 自分でつくったイカダで渡りたいでしょ!?
(笑)。
確かに開発スタッフのテストプレイを見ていても、
すごく凝ったものをつくる人もいれば 必要最小限の部品しか使わない効率重視な人もいて、 それぞれの性格が出ていて面白いところでもありますね。特にデザイナーは凝ったものをつくる傾向があるよね(笑)。
「くっつける」というのを遊びの真ん中に置いたことで、
つくり込みたい人たちにも、最小限の目的だけ達成したい人たちにも、 どちらにも応えられる仕組みになったと思います。その辺のバランスは、かなり気をつかいました。
とことん凝ったものをつくるという楽しみがありながら、
どんどん先に進めたい人は、あまり難しく考えなくてもよいというのは、 それぞれにあったプレイができてありがたいですね。それから、機能面でいうと、
前作には「がんばりゲージ」というフィジカルゲージはあっても 「マジックゲージ」に相当するものがなかったので 今作はその要素をぜひ入れたいと、もうひとつ追加した特殊能力が、 「魔法」こと「ゾナウギア」です。
青沼さんのプレイ映像でもご覧いただけるんですけど、 「ゾナウギア」を使うと風を起こしたり、物を動かしたりできる。
この力を使うことで、例えば「全方位火炎放射器」みたいな デタラメなものもつくれたり。
いい意味でズルできる場面もたくさん用意しています。
でも、魔法のゲージとか言いながら、画像見た目は乾電池なんだよね(笑)。
(笑)。
今作は、前作のシーカー文明が持つ超古代の「技術」ではなく、
ただ実際、「スピリチュアルなアイテム」といっても、 それ自体が何なのかわからないと、 使ってすらもらえないですよね。
なので結局、「これは“魔法”なんですよ」 って言ってできたものが・・・ まあ、扇風機です。
(笑)。
見た目のわかりやすさはやっぱり大事ということで、
それをいかに『ブレス オブ ザ ワイルド』の世界で スピリチュアルっぽいものとして見せるか、 これがまた・・・なかなかの難題でした。
デザイナーとしては腕の見せどころではあるわけですが(笑)。
プレイヤーが実生活で全然見たこともないものを見せられても、
なので、あえて日常にあるような見た目にすると、 きっとこう使うんじゃないかというのが直感的にわかる。
それを「ゼルダ」の世界に「魔法」があったら・・・ という形に落とし込むと案外しっくりきたわけです。
「くっつける遊び」や「魔法」も、ゼルダなりの少しコミカルな表現で
直感的にわかりやすくプレイできる工夫がしっかり盛り込まれて いるんですね。