『ポケットモンスター』シリーズは、最新技術を積極的に採り入れてきたゲームです。さまざまな周辺機器を採用し、インターネットも早くから利用して、「遊び」の質を拡大させてきました。
『ポケットモンスター』シリーズの周辺機器といえば、皆さんは何を思い浮かべますか?
「はい、先生! 『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン』(2004年)の「ワイヤレスアダプタ」ですっ!」
目のつけどころがいいですね。「ワイヤレスアダプタ」は、『ポケットモンスター』シリーズで初めて無線によるポケモン交換と対戦を実現した周辺機器です。ゲーム機同士をケーブルでつなぐことなく、ポケモンの交換と対戦ができるようになりました。あの時の開放感は忘れられません。
「せんせーいっ! わたしは『ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー』(2009年)の「ポケウォーカー」が大好きでした!」
「ポケウォーカー」は、歩数計ですね。ゲーム中のポケモン1匹を「ポケウォーカー」の中に入れ、連れて歩ける遊びが斬新でした。
あちゃーっ。
いつもの妄想が爆発して、いつの間にやら、今回は学校の先生になっていました……。気を取り直して、こんにちは! ポケモン公式ガイドブック著者の元宮秀介です。ニンテンドー3DSバーチャルコンソール『ポケットモンスター 金・銀』の魅力をさまざまな角度から探っていくこの連載は、早くも3回目を迎えました。
『ポケットモンスター』シリーズと周辺機器の密接な関係は、いちばん最初の『ポケットモンスター 赤・緑』(1996年)から始まっています。『ポケットモンスター 赤・緑』は、2台のゲームボーイ本体を「ゲームボーイ専用通信ケーブル」で接続し、ポケモンの交換を実現しました。それまで「ゲームボーイ専用通信ケーブル」は、パズルやスポーツなど、2人で対戦するゲームに用いられるケースがほとんどでした。
さらにいえば、
「ゲームボーイ専用通信ケーブル」を使って、モンスターを交換するゲームは、皆無でした。
そうです。
今でこそ、当たり前になったモンスターの交換は、『ポケットモンスター 赤・緑』が最初に実現した遊びだったのです。
家族や友人とポケモンを交換して、ポケモン図鑑を完成させる。このまったく新しい遊びに日本中が夢中になりました。あまりに多くの人々が夢中になったため、「ゲームボーイ専用通信ケーブル」は品切れ状態が続いたように記憶しています。
ポケモンとテクノロジー。
最新技術を採り込んで新しい遊びを創造する『ポケットモンスター』シリーズの姿勢は、『ポケットモンスター 金・銀』(1999年)で確固たるものになった、と僕は考えています。
『ポケットモンスター 金・銀』は、採り入れた技術や連動する機器が多く、今思い返しても豪華絢爛でした。
主要なものを挙げてみます。
『ポケットモンスター 金・銀』が採用した主なテクノロジー
・ゲームボーイカラーの56色同時発色
・カートリッジに内蔵された時計機能
・ゲームボーイカラーの赤外線通信
・「ポケットプリンタ」との連動
・「ポケットピカチュウカラー 金・銀といっしょ!」との連動
最近ポケモンファンになった方は、知らない機能や見たことのない機器もあるでしょう。
それでは、それぞれをくわしく解説していきます!
『ポケモン 金・銀』とテクノロジー 1
ゲームボーイカラーの56色同時発色
『ポケットモンスター 金・銀』は、モノクロのゲームボーイでも、ゲームボーイカラーでも、遊ぶことができました。ゲームボーイカラーは、ゲームの画面をカラーで表示できる、当時としては最新型のゲームボーイ。3万2000色の中から、56色の発色が可能でした。
モノクロだったポケモンたちがカラーで活き活きと描かれる。
それは何よりの喜びでした。
ピカチュウが黄色い! プリンがピンク! リザードンが赤く燃えている!
そんなシンプルなことが、何よりうれしかったことをよくおぼえています。
また、色違いのポケモンが登場したのは、この『ポケットモンスター 金・銀』からでした。単にポケモンに色をつけるだけではなく、「色違いのポケモン」という斬新な発想をもプラスする「遊びの探求心」には、頭の下がる思いがします。
『ポケモン 金・銀』とテクノロジー 2
カートリッジに内蔵された時計機能
『ポケットモンスター 金・銀』のゲームカートリッジには、時計機能が組み込まれました。ゲームの中で、現実と同じ時間が流れるのです。時間が流れると、ゲームの中に朝と昼、夜を創出できます。年月日や曜日も同様です。
この時計機能の採用により、朝、昼、夜、それぞれの時間帯にしか出現しないポケモンが生み出されました。例えばバタフリーやスピアーは朝の時間帯だけにしか出現しません。ホーホーやヤミカラスは夜の時間帯だけに出現します。
ラプラスは、金曜日だけに出現します。
また、時間帯はポケモンの進化にも影響しました。よくなついたイーブイを朝と昼の時間帯にレベルアップさせるとエーフィに、夜の時間帯にレベルアップさせるとブラッキーに進化させることができました。
時計機能の採用で、ポケモンの生態に、新たな不思議が加わることになったのです。
時間の流れは、その後の『ポケットモンスター』シリーズに継続して採用され、2016年に大きな革命をもたらします。それは「時差」です。
『ポケットモンスター サン・ムーン』では、『ポケモン サン』と『ポケモン ムーン』の間に、12時間の時差を設けたのです。自分のものと違うソフトを遊んでいる人と話をすると、その人がまるで遠い国にいるかのような錯覚すらおぼえます。
『ポケモン 金・銀』とテクノロジー 3
ゲームボーイカラーの赤外線通信
ゲームボーイカラー本体には、赤外線通信機能が搭載されています。『ポケットモンスター 金・銀』は、赤外線通信機能を使い、新たな遊びを生み出しました。その名は「ふしぎなおくりもの」。『ポケットモンスター 金・銀』をセットした2台のゲームボーイカラーを向かい合わせて、ボタンを押すと、互いのプレイヤーにどうぐが1つずつ手に入る遊びです。
どうぐの中には、「かみなりのいし」「ほのおのいし」「みずのいし」といったポケモンを進化させる石や、「ピーピーマックス」「げんきのかたまり」など、フレンドリィショップでは売っていない貴重なものがありました。
「ふしぎなおくりもの」という名称は、現在の『ポケットモンスター』シリーズでも引き継がれています。幻のポケモンや、ゲーム中では手に入らないどうぐを受け取ることができる機能として、おなじみですよね。
『ポケモン 金・銀』とテクノロジー 4
「ポケットプリンタ」との連動
「ポケットプリンタ」は、1998年に発売されたゲームボーイの周辺機器です。「ポケットカメラ」と同時に発売され、ゲームボーイの画面をプリントする機能を持ち合わせています。
『ポケットモンスター』シリーズでは、『ポケットモンスター ピカチュウ』(1998年)が最初に対応しました。
『ポケットモンスター 金・銀』ももちろん、「ポケットプリンタ」に対応。実にさまざまなのものをプリントすることができました。
『ポケモン 金・銀』でプリントできるもの
1.ポケモン図鑑
2.マサキのパソコン
3.きねんしゃしん
4.アンノーンずかん
5.メール
1.は、ゲーム中のポケモン図鑑をプリントできました。
2.は、パソコンのボックスにいるポケモンの名前の一覧をプリントできました。
3.は、「てもち」のポケモンのステータス画面をプリントできました。
4.は、アルフの遺跡でつかまえたアンノーンをプリントし、古代文字によく似た姿を活かして謎のメッセージをプリントして遊ぶことができました。
5.は、びんせんをプリントする機能です。『ポケットモンスター 金・銀』では、かわいらしいびんせんにメッセージを書き、ポケモンに持たせて交換することができました。
「ポケットプリンタ」の用紙は、シールになっていました。僕は当時、単語帳のカードにポケモン図鑑のシールを貼って遊んでいました。1枚のシートに1種類のポケモンの『金』の図鑑画面と『銀』の図鑑画面を貼れば、僕だけの図鑑の1ページができ上がる。カードだからページの追加も入れ替えも思うまま。我ながら良いアイデアだったと思うのですが、どこへいってしまったんだろう、あの自家製のポケモン図鑑……。
『ポケモン 金・銀』とテクノロジー 5
「ポケットピカチュウカラー 金・銀といっしょ!」との連動
「ポケットピカチュウカラー 金・銀といっしょ!」は、歩数計です。歩いた分だけ、ワットがたまります。赤外線通信を使ってゲームボーイカラー本体へワットを送ると、『ポケットモンスター 金・銀』でさまざまなどうぐをもらえました。その中には「ピーピーエイダー」「げんきのかたまり」「ふしぎなアメ」など貴重などうぐがありました。自分の部屋をもようがえするグッズも手に入りました。「みずいろベッド」や「なみピカぬいぐるみ」「ピッピのポスター」……などなど。
当時、僕は幼かった娘の冒険をサポートするため、彼女の『ポケットモンスター 銀』へワットをプレゼントしていたものです。……懐かしいなあ。
『ポケットモンスター』シリーズとテクノロジーの融合には、人と人のコミュニケーションを活発にする、というテーマが一貫して存在しています。
きっと『ポケットモンスター』シリーズのクリエイターの方々は、ゲームを遊んでいる皆さんの笑顔を想像しながら、日々ゲームの開発に勤しんでいるのだと思います。
恒例のマニアッククイズです。
挑戦してみてください。
【クイズ 1】
『ポケットモンスター 金・銀』で、昼の時間帯だけに出現するポケモンはどれでしょうか?
【クイズ 2】
色違いのギャラドスは体の色が赤色ですが、色違いのコイキングの体色は何色でしょうか。
【クイズ 3】
『ポケットモンスター 赤・緑』のポケモンを、『ポケットモンスター 金・銀』へ連れてくる設備はなんという名前でしょうか。
次回は、これまで誰にも語っていない「僕の攻略本事始め」というエッセイを執筆します。クイズの答えとともに楽しみにお待ちください!
[Vol.2]のマニアッククイズの答え
【クイズ1】ピカチュウ、エーフィ、カビゴン
【クイズ2】3.
©1995,1999 Nintendo/Creatures inc./GAME FREAK inc.
©2017 Pokémon. ©1995-2017 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。
ニンテンドー3DSのロゴ・ニンテンドー3DSは任天堂の商標です。
GAME BOYのロゴ・GAME BOY・ゲームボーイは任天堂の登録商標です。
※画面は開発中のものです。
edited by : 元宮秀介(ワンナップ)