みなさん、こんにちは! やとわれ遊撃隊の・・・じゃなくって、ライターの左尾昭典です。
第1回のテーマは「臨場感とかっこよさを求めて」でしたが、いかがだったでしょうか。今作のディレクターの林さんが、N64版の『スターフォックス64』が出た当時は、まだ高校生だった、という話を聞いて、大いなる時の流れをしみじみと感じてしまった私です。
さて、第2回のテーマは「新しいマシンで広がる遊び」。今作ではアーウィンなどのおなじみのマシンが登場するだけでなく、変形をしたり、新しいマシンも追加されています。そのことで『スターフォックス』という遊びがどのように変わるのか、という話だけではなく、得点を稼ぐためのお得な超裏技情報も聞いてきましたので、ぜひお読みください。それでは出撃!
新しいマシンで広がる遊び
20年以上も前につくったものも再現
『スターフォックス ゼロ』では、フォックスが乗るマシンが変形することも、大きな特徴のひとつになっていますね。
宮本
今作では戦闘機である「アーウィン」が、地上を走り回れる「ウォーカー」に変形しますが、このアイデアは、スーパーファミコン用ソフトとしてつくっていたものの、次のハードのNINTENDO64の足音が聞こえてきたので開発を中止したという、幻の『スターフォックス2』の時点であったんです。『2』のときは、敵の戦艦などの狭いところに入ったときにロボットに変形できるようになっていたんですが、今作ではAボタンを押すことで、どこでも好きなときにウォーカーに変形できるようにしました。
林
じつは今作でも、その幻の『2』のときのウォーカーで遊ぶことができるんですよ。
えっ、そうなんですか?
林
今回はフォックスのamiiboをタッチすると、スーパーファミコン版のときのアーウィンで遊べるようになりますけど・・・。
アーウィンだけじゃなく、レーザーやボム、サウンドまでも、スーパーファミコン版の雰囲気を楽しめるんですよね。
林
そうです。さらに、『2』のときにつくったロボットに変形して、操作ができるようになっているんです。「ウォーカーFX」って呼んでいます。
宮本
いまの技術を使って、20年以上も前の単純なポリゴンモデルを再現しました。
スーパーファミコン版のアーウィンどころか、昔のウォーカーも使えるようになるなんて、すごくうれしいですね。
宮本
フォックスとファルコのamiiboは『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズとして発売されたわけですけど、それらを買ってくださった方には、何らかのかたちでお応えしたいな、という気持ちもあってがんばってつくりました。
変形して戦艦の上にも
『2』が元でつくられた今作のウォーカーですが、その動きを見ていると鳥のような印象がありますね。落下するときに、羽根のような感じでパタパタ動きますし。
宮本
あのパタパタ、かわいいでしょ?(笑)
はい。すごくかわいいです(笑)。
宮本
最初は半分冗談で、「パタパタさせてみようか」と言ってたんですけど、実際にできてみると、みんなが「これいいね」という話になりました。そもそも『2』のときにつくったロボットも足の構造が鳥型だったんです。なので「鳥型にしたいな」という話は最初からあったんですけど、今作ではモデルをつくる人がすごくがんばってくれて。
林
それぞれのパーツが、矛盾なく変形するようになっているんです。
じゃあ、実際にアーウィンのプラモデルをつくって、それをウォーカーに変形させることも可能なんですね。
宮本
そうです。ちなみに、それをamiiboで試作してみたんですけど、ジョイントの強度に不安があったので、発売を見送ることになりました。
ああ・・・それはとっても残念です。
宮本
僕も残念です。すごくがんばったんですけどね。
では、話題を変えます。今回はマシンが変形することで、遊びの幅がぐんと広がりましたよね。たとえば、最初のステージのコーネリアで、N64版のときはアーウィンで飛ぶだけだったのが、今回はウォーカーに変形して、地上を走りながら攻略することもできますし、すると違った発見があったりしますよね。
宮本
そうですね。ウォーカーに変形すれば、敵の戦艦の上にも乗ることができて、それが最初にできたときはすごくうれしかったんです。
つくっている人でもうれしいものなんですか?
宮本
それはもう(笑)。そもそもアーウィンが敵の上に乗るなんて考えられませんけど、ウォーカーに変形してから戦艦の上に乗り、ターゲットを撃つと、すごくかんたんに倒せるんです。その代わり、足場が崩れるので、慌ててアーウィンに変形して飛び上がらないといけないんです。ウォーカーのままだと、いっしょに落下してしまいますからね(笑)。
あははは(笑)。
宮本
なので、けっこうリアルな、理にかなった遊びができるようになりましたし、ほかにも敵戦艦に乗る遊びをいろいろ模索しました。
アドベンチャーゲームの楽しみも
『スターフォックス ゼロ』で使えるマシンは、戦闘機のアーウィンと戦車のランドマスターがありますけど、今作で初登場のジャイロウィングはかなり異質ですね。このヘリコプタータイプの新しいマシンはどういう経緯で生まれたんですか?
宮本
3D空間を乗り物で動くわけですから、ゆったり移動したり、空中で静止できるようなものがほしかったんです。そこで、ジャイロウィングをつくることにしたのですが、そのあとにダイレクトアイというロボットを降ろして、そのロボットに地面で作業をさせるというアイデアが生まれたんです。
ダイレクトアイはかわいいですよね。
宮本
けなげでしょう(笑)。
はい。声もかわいいですし(笑)。
宮本
で、せっかく2画面があるんだから、ダイレクトアイから見るとどうなるか、ということで、実験をしてみたんです。すると、見上げてみた先にジャイロウィングが浮かんでいたりして、そういう視覚的な体験がおもしろそうだということで、ステージの構成を考えていきました。
林
すると、遊びもすごく広がったんです。ダイレクトアイは小さいですから、ジャイロウィングが入れないような狭いところでも進んでいくことができますので・・・。
宮本
ただ、ジャイロウィングとはケーブルでつながっているので、進める距離に限りがあるんですけどね。
ダイレクトアイは弾も撃てますけど、ジャイロウィングが活躍する惑星ゾネスは、どう考えてもシューティングゲームではないですよね。
宮本
そうです。ジャイロウィングが出てくるステージはアドベンチャーゲームなんです。
『ゼルダの伝説』のように遊べるんですね。たしかにゾネスには、いろんな遊びが詰まっていますよね。たとえば、ただ単純に敵を撃って倒すのではなく、その上にある物体を撃って、それを落下させて倒すというような、発想力が試される遊びもありますし。
宮本
倒しかたがいくつもあって、得点も違うんです。水面に浮かんだじゃまな潜水艦も、ロボットの部分を撃つと迷走をはじめますが、砲台を撃つとその場で爆発する、というように。あと、「ゾネスのシャーク釣り」というのは知ってますか?
えっ、釣りができるんですか?(笑)
宮本
はい(笑)。ジャイロウィングで飛んでいると、水路から「ゾネスシャーク」という、水の中から飛び上がって、口が割れて撃ってくるやつがいますよね。
ああ、あれがシャークなんですね。じゃまなので、出てきたらすぐに撃って倒していました。
宮本
それはもったいない(笑)。じつはあれ、ダイレクトアイを食べるんです。
ロボットのダイレクトアイを食べるんですか?
宮本
ダイレクトアイを水面に吊すと、シャークが出てきてパクッと食べるんです。
食べられるとどうなるんですか?
宮本
くわえた瞬間にダイレクトアイをサッと回収すると、5ヒットポイントもらえます。
ええーっ(笑)。
宮本
なので、あれを見つけては、こつこつとポイント稼ぎができるんです。それに、いつでも出てくるやつと、遠くに出てくるけど、近づくと出てこないやつもいるんです。でも、そこには間違いなくいるので、その場所のあたりまでダイレクトアイをたらして、びくっときた瞬間に、バチッと合わせると、5ポイント(笑)。
へえ~。
宮本
そんなふうに、ゾネスにはいろんな謎が詰め込まれているので、探してみるとおもしろいですよ。
とってもいい話を聞きました(笑)。
放っておけないタイトル
お話を聞いていると、今作への宮本さんの関わり度が半端じゃないように感じるのですが・・・。
宮本
今作のクレジットは「プロデューサー兼スーパーバイジングディレクター」ということで、わりとディレクターに近い位置で仕事をしていたんです。
ディレクターという立場はいつ以来ですか?
宮本
1998年に出た『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のときは、ディレクターに近いことをやっていましたけど、クレジットはプロデューサーでしたので、その前の『スーパーマリオ64』以来じゃないかと思います。
ということは20年ぶりのディレクターということなんですね。
宮本
そうなりますかね。
そこまで宮本さんが現場に入り込んだ理由は何だったのですか?
宮本
なんでしょう・・・代わりにやってくれる人がいなかったから?
林
あははは(笑)。
宮本
そこで今回は、3人ディレクターでやることにしたんです。隣にいる林と、共同開発をしてくれたプラチナゲームズの橋本祐介さん(※)と僕の3人で。
※ プラチナゲームズの橋本祐介さん=大阪に本社を置くプラチナゲームズ株式会社に所属するゲームデザイナー。Wii U『ベヨネッタ2』ではディレクターを担当。
それこそ20年ぶりにディレクターを務めたというのは、宮本さんにとっては、『スターフォックス』が放っておけないタイトルのひとつだから、なんじゃないでしょうか。
宮本
ああ、そうですね。うまいこと言ってくれますね。
(笑)
宮本
もともと『スターフォックス』をやりたいと言ったのは僕でしたから、それをどうつくるか、ということも僕が決めないといけなかったんです。
でも、楽しんでつくっていた感がすごく伝わってきました。
宮本
ええ、好きでやっていましたからね(笑)。
一方で林さんは、高校時代はN64版を遊ぶ側という話でしたが、今回ディレクターとしてつくる側にまわって、「なるほど、こうだったんだ」という発見はありましたか?
林
はい、すごくありました。たとえば建物ひとつとっても、配置する場所に意味があって「ああなるほど」と思うことがたびたびありました。高校時代に遊んでいたときは、自分が自由に飛んでいたつもりだったんですけど、じつは自由に飛べるように配置されていたんだ、ということがわかりまして・・・。
宮本
林は今回、いろんなものの配置を変えるだけで、こんなに遊びが変わるのか、ということをいっぱい体験してるんです。
林
そうですね。気持ちよく撃てるような敵の出かたなんかも学びましたし。
つまり林さんは、どうしてこのビルがここに置かれているのか、どうしてこの敵がこのタイミングで出てくるのか、ということを、N64版を遊んだ19年後に理解できたんですね。
林
そうなんです(笑)。誰もが気持ちよく遊べるために、そこまで緻密に考える重要性を学ぶことが、今回はできたと思います。
- [第1回] 臨場感とかっこよさを求めて
- [第2回] 新しいマシンで広がる遊び
- [第3回] 開発へのこだわり
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