みなさん、こんにちは! 『スターフォックス』のテーマ曲を聴くと元気もりもりになるライターの左尾昭典です。
『スターフォックス ゼロ』のインタビューも、いよいよ最終ステージに突入! 前回では、20年ぶりにディレクターを務めた宮本さんが、まるで少年のように、楽しそうに語っていたのがすごく印象的でした。
さて、最終回のテーマは「開発へのこだわり」です。超ベテランディレクターの宮本さんと、若手ディレクターの林さんが、どのようなこだわりを持って『スターフォックス ゼロ』をつくったのか、そして同時に発売される『スターフォックス ガード』はもちろん、ウェブで公開されたショートアニメの話も聞いてきましたので、ぜひお読みください。それでは出撃!
開発へのこだわり
自分でアクションを極めるからおもしろい
いろんな楽しみかたのできる『スターフォックス ゼロ』ですが、このソフトを開発するにあたって、いちばんこだわったのはどんなことだったのですか?
宮本
とにかく自分がパイロットになった気分になれること、です。
第1回でお聞きした、「耳元で声が聞こえる」ということも含めてそうなんですね。
宮本
それも含めてです。そして、次の手を自分で考えて、その作戦どおりにやってみると、格段にスコアが伸びる、というようなことですね。
やみくもに突っ込んで遊ぶのではなく、まずは自分で作戦を考えて、それを試してみることが大事なんですね。
宮本
そうです。すると、アクションゲームとしての達成感がものすごく大きいものになると、僕は思っているんです。アクションゲームはむずかしいので、やさしくしてほしいという方も少なくないと思うんです。でも、アクションゲーム本来の魅力というのは、自分でアクションを極めるからおもしろいんだというところに、今回はとくにこだわってつくりました。苦手な人も自分の成長を感じられるようなゲームをめざしました。林さん、そうですよね?
林
はい。先ほど、ビルの配置の話をしましたけど、敵やモノの配置を、宮本と相談しながら少しずつ微調整していって、各ステージを何度も遊ぶことによって、少しずつ点数が上がっていくような構成にもしましたし。
だから、最初に触って「ちょっと難しいかな」と感じても、何度か遊んでいるうちに、どんどん上達するようにと、いろんなものが構成されているんですね。
宮本
そうです。同じコースでも、何度も遊んでいると、必ず新しい魅力が見つかると思います。ただ、『スターフォックス ゼロ』というゲームは、何度か遊んでいるうちに、自分だけの攻略ルートができあがってしまうんです。
いつも同じコースで飛んだりしますからね。
宮本
そのように自分のコースをまずつくって、そのあとに別のルートを探してみると、すぐに次のルートが見つけられます。そこで、その新しいルートを4、5回遊ぶと、次第に極められるようになり、最初のルートとどっちがいいのかを考えることができるほどに、大事につくってあります。
つまり、このコースで飛ぶのが正しいと、自分では思っても、じつはそうじゃないこともあるんですね。
宮本
だから、人のプレイを見ると、「ああ、そう行くか!」という発見が、お互いにあったりするんですね。
なぜイヌとサルの仲が悪いのか
そのほかにこだわったのは、どんなところだったんですか?
宮本
僕はよく「ゲームにストーリーはつけない」と言っているんですけど・・・。
よくおっしゃってますよね。
宮本
でも『スターフォックス』をつくるときは、じつはストーリーをとても気にしているんです。とくに登場人物たちの関係にこだわりを持っていて、たとえばフォックスとお父さんの関係もそうですし、イヌとサルの関係もそうなんです。
イヌはペパー将軍が率いるコーネリア軍で、フォックスたちは彼らに雇われているわけですね。
宮本
はい。
それに敵対するサル・・・Dr.アンドルフは悪役で、つまりイヌとサルの対立の図式になっているんですよね。
宮本
でも、勧善懲悪の話にすると、単純すぎて想像の余地がなくなります。「犬猿の仲」とは言いますけど、なぜイヌとサルの仲が悪いのか、というところまで、もう一歩踏み込んで、バックストーリーを考えるようなことを、今回はやっていたんです。
つまり正義vs悪の単純な物語ではないんですね?
宮本
そうです。そこで今回、新ネタとして「転送装置」というのが出てきますけど・・・。
「転送装置」を使えば、新しいエリアに行けるんですよね。
宮本
そうなんです。でも、それだけではなく、その「転送装置」はストーリーにもけっこう深く関わっていて、その推進派と消滅派に分かれてサルとイヌが敵対しているというお話になっているんです。
犬猿の仲になったのも、じつは理由があったんですね。
宮本
ええ。そのようなストーリーをスターフォックスの世界観に加えていきたいということで、じつは『スターフォックス ゼロ』のアニメーションもつくりました。
今回はアニメーションをつくるほど、『スターフォックス ゼロ』に入れ込んだんですね。
宮本
はい。すごく入れ込みました(笑)。で、そのアニメを見ると、ゲームを遊んでいる人の思い入れがさらに増すと思いますし、アニメーションを見てから遊ぶと、もっと理解が深まると思うんです。
それは楽しみです。
宮本
で、そのアニメーションなんですが、ゲームの発売直前にようやく完成しましたので、ぜひご覧ください。
多人数でも楽しめる『スターフォックス ガード』
さて、『スターフォックス ゼロ』と同時に『スターフォックス ガード』も発売されますが、どんな経緯でつくられたゲームなんですか?
宮本
これは途中まで林がディレクターをしていたゲームなので、本人が答えたほうがいいでしょうね。
林
はい。『スターフォックス ガード』は、もともと2画面を使って遊ぶ企画のひとつとしてスタートしまして、テレビ画面を見ながら、プレイをしていない、周りの人も巻き込んで楽しめるようなゲームをめざして開発しました。
ゲームジャンルは「監視カメラシューティング」ですね。
林
そうです。採掘基地がありまして、そこにいろんなタイプのロボットが攻めてくるので、それを12基のカメラで監視をしながらロボットを倒すというゲームです。
ひとつのテレビ画面に、なんと12基もの監視カメラの映像が映るんですね。
林
そうなんです。なので、ひとりで遊んでいると「攻めてくるロボットはどのカメラに映ってるの?」と、ちょっとしたパニックに陥ると思うんですけど、周りで見ている人が「3番のカメラにロボットが映ってるよ」とアドバイスすることで、進入してきたロボットをかんたんに倒せるようになっています。
だから、1人用のゲームなんですけど、多人数でも楽しめるゲームなんですね。
林
そうです。
宮本
そもそもこのソフトは『スターフォックス ゼロ』の入門編としてつくったんです。シューティングゲームって、なかにはむずかしいという人もいて、でも『スターフォックス ガード』だと、カメラの向きを合わせて撃てば倒せるので、誰にもわかりやすく、シンプルに楽しめるものをめざしました。
林
そもそも12画面のゲームって、いったいどんなものなんだろうと考える人もいると思うんです。でも、触るとすぐにおもしろさをわかっていただけると思います。
大画面のテレビが普及したこの時代だからこそ、12画面のゲームを可能にしたところもありますよね。
宮本
それは大きいですね。じつはこれ、スーパーファミコンの頃から、ずっとそういうテーマで実験していたんですけど、ゲーム機が1画面ではなく2画面になったこと、そしてテレビが大きな画面になったいまの時代にリリースすることがベストだと思って、今回発売することにしました。
無敵モードで、苦手な人も
それでは最後に、このトピックスをお読みいただいている方々にメッセージをお願いします。
宮本
『スターフォックス ゼロ』は基本的にはルート開拓をするゲームです。数で言うと20種類くらいのルートがあって、あるルートを極めている間に、別のルートを見つけたりしますので、自分オリジナルの解きかたを完成させていくということを楽しんでもらえれば遊びごたえがあります。
遊ぶたびに、自分でテーマを決めるという楽しみかたもありますよね。たとえば得点を上げることだけに集中するとか、新しいルートを探すために、いろんなところを飛んだり走ったりするとか・・・。
宮本
そうですね。なので、人が遊んでいる映像を見ると、必ずどこかにヒントがあると思いますし、とことん遊び尽くしてみてください。
林さんはどうですか?
林
最初の話にあった、3Dの音声などの臨場感は、実際にプレイしてみないと実感できないと思うんですけど、2つのスティックで直感的に遊べるようになっていたり、Wii U GamePadのコックピットの画面を見たりと、かなり臨場感を味わいながら遊べるものになったと思っています。ちょっと歯ごたえはありますけど、遊んでいるうちに、自分がアーウィンのコックピットのなかで、実際に戦っているような感覚になり、すごく手に汗を握るゲームになりましたので、そこを楽しんでいただきたいと思います。
いま林さんは「ちょっと歯ごたえはある」ということをおっしゃいましたけど、今回はアクションが苦手な人のために「無敵アーウィン」のモードが入っているんですよね。
林
はい。3回作戦失敗になる(※)と、再スタートするときに救援物資が届いて、無敵状態になります。
※ 3回作戦失敗になる=残機をすべて失い、最初からのチャレンジを3回繰り返すと、次回スタート時に無敵アイテムが出現します。
どんなに攻撃を受けても、撃墜されることはないんですか?
林
はい。その代わり、ヒットポイントの記録は残せないようになっています。
宮本
今回はそのように、遊ぶ人の幅を持たせてるつもりなんですけど、なかには「自分には無敵モードは必要ない」という人もいると思うんです。なので、3回で出すようにするのか、それとも6回で出したほうがいいのか、すごく迷ったんです。
林
ただ、無敵モードに頼りたくない人は救援物資を受け取らなければ、無敵になりませんので、そういう選択肢も残すようにしました。
3回作戦失敗したら「無敵アーウィン」が使えるようになるというのは、自分のようにすぐに撃墜されてしまうプレイヤーとしては、すごく勇気をもらえたような気持ちです。
宮本
だったら3回にしてよかったね。
林
はい(笑)。
以上、全3回にわたってお送りしました、『スターフォックス ゼロ』開発スタッフインタビュー。記事では紹介しきれなかったのですが、宮本さんは今作のことを「Wii Uを使った、『スターフォックス』シリーズの完成形」とおっしゃっていました。
言うまでもなく、宮本さんは『スーパーマリオ』や『ゼルダの伝説』の生みの親。なので『スターフォックス ゼロ』は、シューティングというジャンルの枠を超えて、宮本さんが長い年月をかけて培(つちか)ってきた、アクションやアドベンチャーゲームの楽しさのエッセンスも、たっぷり詰め込まれたゲームになっているのだと思います。そもそもこのゲームで、釣りのような遊びができるなんて、想像できませんでしたからね(笑)。
さて、その「『スターフォックス』シリーズの完成形」もいよいよ本日(4/21)発売です。林さんは最後に「ちょっと歯ごたえがある」とおっしゃっていましたが、だからこそ、クリアしたときの爽快感は格別のはず。それにアクションが苦手な人にはうれしい「無敵モード」も入っていますし、ぜひ楽しんでいただければと思います。
それではみなさん準備はよろしいですか。全機発進!
- [第1回] 臨場感とかっこよさを求めて
- [第2回] 新しいマシンで広がる遊び
- [第3回] 開発へのこだわり
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