さきほどマリオとルイージの「絆」という話が出ましたが、今作はRPGですから、マリオとルイージの絆をどう見せるか、ストーリーの中でどう表現するかということが重要になりますよね。
大橋さんはストーリーの演出に強い方なんですけど、
全体的にドラマチックに描かれるシーンが多くて、 特にマリオとルイージの兄弟の絆は 強調された表現になったなと思いました。今回は3Dになったことでシネマチックな表現もできるようになりました。
芝居とカメラでしっかり表現をつけていこうと思って 演出はかなりこだわりましたね。個人的に大砲で島に飛んでいくときのカットシーンが、お気に入りです。動画次第に、綺麗に決まるようになっていくんです。 アニメーションのつくり込みにこだわりを感じました。
普通だったら同じ動きを繰り返し使ってしまいそうな場面なんですけど、 最初のころはドタバタしながら着地していたのが、ラフコンテを書いて担当に渡したら、
すごい数のバリエーションをつくってくれたんですよね。 「全部同じ動きだと飽きるでしょ」って。最初のグラングラン島の着地シーンでは画像ルイージセンスのビックリマークが「L」の形になっているのとかもそうですが。
フィールドにもルイージがベタンと着地した跡が残っていて。 気づいた方はクスッとできるような遊び心がすごくいいなって。こういうのが「マリオ&ルイージRPGらしさ」につながるんですよね。
開発の後半にはこういうのが「らしさ」なんだって、 みんな理解が深まってきて。あ、でもひとつツッコミどころがあるんです。画像実はルイージはあのとき頭から刺さって着地してるはずなんですよ。 でも、画像地面にはルイージの真正面からぶつかったような跡が・・・ 誰も気づかなかったということで、見逃していただければと・・・(笑)。
グラングラン島の着地シーン、(笑)。
演出というと、動画マリオたちと対抗するゾケットたちとクッパ軍団が、空中で戦うシーンはダイナミックで印象的です。
あれ、プロットでもシナリオでも、小競り合いレベルで
単に撃ち合っているだけの予定でしたよね? だれも撃ち落とされない程度と思っていたのに、 テスト動画を見たらめっちゃ派手に撃ち落としあっていて、驚きました(笑)。迫力を出したかったんです。
あのシーンはクッパ軍団がはじめて本格的に出てくるところで、 この世界にもクッパ軍団がいて、ゾケットたちと戦っているんだ! っていうのをはじめてお客さまが理解するシーンなんです。 だからしっかり印象づけたくて。
でも、なかなか難しいぞ、なんて思ってたら シーンの担当者から上がってきたコンテでは 緊迫感と迫力がしっかり出てて・・・ これはすごいぞって思いました。
映画だ!って思いましたね。
これだけ演出をつくりこんだんだから、
サウンドもちゃんとつくらなきゃって思いましたよ。今回開発にアクワイアさんに入っていただいて、
3Dになってがらりと変わったので、 音楽も新しいチャレンジをすることにしました。 ノイジークロークの坂本さん※9にお願いしたんですが、 大橋さんは坂本さんと長くお仕事されてきたんですよね。※9坂本英城。ノイジークローク代表取締役のサウンドプロデューサー、およびサウンドクリエイター。『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』などの音楽を手掛ける。
ええ。
ところがまた、大変なわけですよ・・・ 「マリオ&ルイージRPGらしさ」の部分が(笑)。(笑)。
これまでのシリーズ作のBGMはピアノを使った曲が多いんですけど、
今回は新しくしたかったので「管楽器を使って感情強めに」 ってお願いをして、後はお任せしていたんですが・・・。曲づくりは苦労しましたね。
で、結局「マリオ&ルイージRPGっぽい楽器」をピックアップして 楽器の数を絞っていくことで「らしさ」を見出していって。 南国っぽいスティールパンとか、ブラスバンドも明るいし、 あとはアコーディオンとか。
楽器を絞ってからはシリーズの雰囲気になじんできましたよね。
でもやっぱり最終的に仕上がったのは、すごく良い曲が多くて。 それに、感心したのは、汎用で繰り返し使う曲以外にも 各シーン専用につくられた曲がたくさんあるんですよ。
普通はバトルはこれ、ボス戦はこれ、ハプニングはこれ、 って何度も使えるように曲をつくるんですけど、 それぞれのカットシーンに全部違う曲を作ってくれたんですよ。
今回はシーンができてから音楽を当てているんですが、
坂本さんは前後の流れを全部チェックしてから作曲されていて。 盛り上げるところなんかも一緒に相談してつくってもらっています。ストーリーが展開する中で、相乗効果が出ますよね。
100曲以上あって、どれも良い曲なので サウンドトラックがほしいくらい(笑)。汎用の曲だけでは演出シーンを表現しきれなかったんですよ。
個人的にシーンの出来がすごく良いと思ったから。 それで劇伴※10としてひとつひとつ演出をつけるとすごく良いものになるな、 って考えたら60曲の予定が40曲も追加になってて(笑)。※10テレビドラマ、映画、アニメや演劇などの作中に効果的に使用される音楽。
えっと、追加になるとスケジュールは・・・。
(笑)。
スケジュールは厳しい中での進行でしたが、
手をかけた分だけ、臨場感も増したと思います。 最後に生演奏で収録をして、また一段と聴きごたえが出ましたよね。「マリオ&ルイージRPGらしいもの」に仕上がったのは
それをより強化したいと思ったので、 アルファドリームさんでシリーズ作を開発されていた ディレクターさんと、フィールド担当さんと、 バトルディレクターさんにも今作の開発に参加してもらいました。 それから、本シリーズに深く携わっていた 元アルファドリームの前川さん※11にも監修をお願いしました。
それもあって、より「マリオ&ルイージRPGらしさ」っていうのは 強化されていったかなと思います。
※11前川嘉彦。元アルファドリーム社長で、「マリオ&ルイージRPG」シリーズにおいて、1作目はディレクター、2~7作目はプロデューサーを担当した。
非常に勉強になりました。
やっぱりこれまでのシリーズを遊んできた方が 今作を触ったときに「なんか違うぞ」って思われるのは 嫌ですからね。RPGはストーリーも重要ですが、遊びの部分におけるバランス調整も難しいですよね。
開発終盤は、福島さんはバトルシステムをつくるチームと、つきっきりでしたよね。
これまでのシリーズ作のバトルには「バッジ」というシステムがあって。
でも、もう少し気楽に使えるものがあるといいなと思って 本作のテーマも踏まえながら、 プラグシステムというものをアクワイアさんと組み立てていきました。
このシステムでは、バッジではなく「プラグ」をつけるのですが、 「プラグ」は、つけているだけでアクションが少し変化したり 追加の効果が発生したりと、通常の行動の中で 効果をわかりやすく実感できるようなものが大半です。
でも、いろんなプラグを組み合わせて使えるので
バランス調整は大変でしたよね。そうですね!(笑)
その中で自由に組み合わせを行えるんですけど、
難しい計算や複雑な戦略を要求する遊びというよりは、 ゲームに慣れていないお子さんなどにも遊んでいただきやすいように、 おおらかに、好きなプラグをつけて変化が味わえるようになっています。
ひとつひとつのプラグの効果だけではなく
組み合わせによって相乗効果を発見していくのも楽しいですよね。一気に大ダメージを与えられる攻撃型プラグのセットでいくのか、
ただ、プラグにも使用回数の制限はあるので、 使い切って回復中のあいだは、ほかのプラグと付けかえしてみつつ、 お気に入りを探してみてください。
私は「テッキュウ」のプラグを使ったバトルが好きです!動画「ついでにテッキュウ」を単体で装着するとテッキュウが1個落ちてくる、 それを「どっかんアタック」と組み合わせると複数落ちてくる、 「ついでにテッキュウ」を2つ装着するとテッキュウ自体が大きくなって それを「どっかんアタック」と組み合わせると 大きなテッキュウが複数落ちてくる、 っていうのが本当にわかりやすくて。
僕らはその組み合わせの検証で一日中バトルしてました(笑)。
そうですね、本当に何周プレイしたかわからないくらい(笑)。
でも、通しプレイをやってみて
プラグの強さを実感しましたよ。 プレイヤーとして、とても楽しめました。古田さん、通しプレイをしてみて、全体の難易度はどうでしたか?
後半は・・・敵の攻撃が激しかったり、ちょっと難しかったですね。
そういう気持ちよさや、 プラグの効果的な使い方を探っていく面白さがありました。 私自身、戦略的な遊び方は不得意なのですが、 これは難しくなくて、シンプルで良いシステムだなと楽しく遊んでいました。
船島が漂流することで、島を訪れるタイミングがお客さまによって変わるわけですから、人によって島を攻略するときのレベルや持っているプラグの種類がけっこう異なりますよね?
大谷さんと僕で同じボスと戦っていて、
大谷さんは細かい要素もくまなく探してまわったり、 過去につなげた島にもう一度行ってアイテムを集めたりして、 ストーリー上の同じシーンにいてもレベルが結構高くなってたんですよね。
対して僕はどちらかというと、サクサク先に進むタイプで。 レベルがぎりぎりかちょっと足りない状態で同じボスに挑むことになって(笑)。
でも敵のレベルは一定なので、 いろいろな遊び方で手ごたえを感じられるように 最後まで調整を行っていました。
難しく感じたときに助けてくれるシステムもありますよね。
そうですね。敵ごとに攻撃のパターンが違うので、
一方で、画像同じバトルで2回以上ゲームオーバーを迎えると 難易度を下げてプレイできるという機能があります。 使っても特にペナルティのようなものはないので、 どうしても倒せない場合は、活用していただきたいです。
エンディングを見てほしいもんね・・・僕は感動しましたよ。
クライマックス付近の展開はぜひ見てほしいです!
きっと驚いていただけるんじゃないかなと思います。なるほど、こだわりのエンディングにたどり着いていただくためにも、遊びやすさやバランスの調整はしっかりと考えられているようですね。
それでは最後になりますが、このゲームを遊んでいただける皆さんへ、ひと言ずついただけますか。
不安や大変なこともありましたが、
「マリオ&ルイージRPGらしく」、 遊びやすく、たくさん笑える旅になっています。 この船島の物語が、ファンの方にも新しい方にとっても、 愛される旅路のひとつになれたなら、 本作シリーズを大切にお預かりした身として、 チームメンバーや任天堂の皆さんに 恩返しができたのかなと嬉しく思います。
魅力的なキャラやフィールドが待っています。 マリオ&ルイージと島々を駆け巡る大冒険を、どうぞお楽しみください!
9年ぶりのシリーズ新作ということで、
3Dになって表現もアップグレードしましたし、 体験としてのクオリティも引きあげられたと思うので 新しいマリオとルイージの冒険を 純粋に楽しんでいただければ嬉しいです。
今作は新しくアクワイアさんにご協力いただいて
ほかのタイトルで聞く「アタリマエを見直す」というのは 今作でも意識していましたが、 それ以上に「アタリマエ」を再現、再生することにも、 多くの工夫やチャレンジを要しました。
今作は、多彩なオリジナルキャラクターたちがいて それぞれのドラマにも心を打たれるものがあります。 サブエピソードも冒険の合間の息抜きにおすすめです。
表情豊かなマリオ&ルイージたちの物語を通して 動きのあるバトルやコミカルなアクションを楽しんでいただけると何よりです。
それでは最後に、大谷さん、お願いします。
まずは9年ぶりの新作ということで、
今作の魅力は、やはり船島が漂流して島を見つけていくという遊びです。 ストーリー分岐があったり、何かを探している間に すでにつなげた島にもう一度行ってみたり。 そうしている間に新しいサブエピソードが追加されていくので 人によって各島での体験内容や、その順番が変わっていきます。
RPGはひとりで遊ぶものではあるけど、 今作はストーリーや演出もドラマチックなので、 できれば家族でテレビアニメを30分みるみたいな気分で ちょっとずつ楽しんでいただけると嬉しいなと思います。
RPGって遊ぶと長いですよね。 でも、島を一つクリアしたらひと区切りにできますし、 今日はこのお話だけ遊ぼうといったように 自分のペースで遊んでみてください。
ぜひ最後までプレイしていただいて、 「マリオとルイージのお話よかったね」と 家族で一緒に楽しんでいただけると嬉しいです。
9年ぶりの新作となった、「マリオ&ルイージRPG」を楽しみたいと思います。ありがとうございました。