任天堂のモノづくりに対する考えやこだわりを、
まず、簡単に自己紹介をお願いできますか。
任天堂の大谷です。
「マリオ&ルイージRPG」シリーズは2作目から担当していて、 3作目からプロデューサーとして参加しています。 担当して7作目となる今作の役割は プロジェクト全体の統括ですけど、 もちろんゲームの内容も一緒に考えたり、まとめたり、 いろいろなことをさせていただきました。任天堂の福島です。
これまではNintendo Switch『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』※1などで コーディネーションを担当していました。 今作では、アソシエイトプロデューサーとして 参加しました。 アクワイアさんと相談しながら、 全体的な内容のまとめや、スケジュール調整など、 試作から完成まで幅広く携わりました。※12018年発売のNintendo Switch用ソフト。さまざまなゲームに登場するキャラクター同士でふっとばして遊ぶ、対戦型アクションゲーム。操作キャラクターは追加コンテンツを含め80体以上に及び、100以上のステージで大乱闘が繰り広げられる。
アクワイア※2の大橋です。
ディレクターとして企画立案や現場の統括を 任せていただきました。 任天堂さんとのお仕事は初めてだったのですが 無事に完成させることができてほっとしています。※2株式会社アクワイア。1994年創業のゲームソフト開発・販売会社。Nintendo Switchでは「剣と魔法と学園モノ。」シリーズの販売、「OCTOPATH TRAVELER」シリーズなどの開発を行っている。
アクワイアの古田です。
マリオシリーズ自体は子どものころから遊んできましたが、 「マリオ&ルイージRPG」シリーズを遊んだのは 今作の開発がきっかけでした。
それでは、大谷さんから「マリオ&ルイージRPG」シリーズと今作の説明をお願いできますか。
「マリオ&ルイージRPG」シリーズの、
マリオとルイージの2人の協力でゲームを進めるのが 特長のアクションRPGで、 ジャンルは「ブラザーアクションRPG」。 「ほどよいアクション」「ほどよい謎解き」 「マリオシリーズの楽しいお話とリアクション」が バランスよくパッケージされているシリーズだと思っています。
そのシリーズの中で、今作は2015年の 『マリオ&ルイージRPG ペーパーマリオMIX』※3以来、 9年ぶりの新作となるタイトルです。
※32015年12月に発売されたニンテンドー3DS用ソフト。マリオとルイージが「ペーパーマリオ」とともに3人で世界を冒険する。
ありがとうございます。9年ぶりの新作、とのことですが、今作のストーリーの舞台はどんなところなのでしょうか。
今作の舞台は「コネクタルランド」というキノコ王国とは別の世界で、
拠点となるのは船島で、漂流しながら他の島を探していくのですが、 見つけた島にはさまざまな仕掛けやバトルが待ち受けています。 ゾケットと呼ばれる敵の脅威も迫る中、 マリオとルイージはいろんな人と出会い、 協力や助けを受けながら立ち向かっていくことになります。
今作の情報が初めて公開されたのは、2024年6月のNintendo Directでした。9年ぶりの新作ということで、驚いた方もたくさんいらっしゃったように思います。
国内、海外ともに、想像以上にお客さまに驚いていただきました。
一番大きな部分としては、やはり 「もう発売されないと思われていたゲームが復活した」 っていうところに驚きがあったんじゃないかなと思っています。「マリオ&ルイージRPG」シリーズは、前作の発売から少し時間があきましたよね。
はい。
この両立が難しく・・・ さまざまな試行錯誤を重ねる中で、 「もしかしたら、もうシリーズ作はつくれないかもな」と 諦めようと思っていた時期もありました。
そんな中、いろいろな検討があり、 アクワイアさんにお声がけすることになりました。
大橋さんと何度かお話をして、アクワイアさんなら 僕たちが目指している「マリオ&ルイージRPG」の3D化という夢を 実現してくれる可能性があると感じ、 共同開発をすることになりました。
もちろん、「マリオ&ルイージRPG」の「らしさ」を 継承することも大事だったので、 過去のシリーズ作の開発に携わっていた 元アルファドリーム※4スタッフの方々にも 参加してもらっています。
※4株式会社アルファドリーム。「マリオ&ルイージRPG」シリーズを代表作にもつゲーム開発会社。活動期間は2000~2019年。
そんなことがあったんですね。アクワイアさんにお声がけすることにしたのは、どういった理由からだったのでしょうか?
まず、高い3Dの技術があること、
実績や技術面からも申し分ないなと思い、 これはぜひ声をかけなければと思いました。
※5スクウェア・エニックスより2018年7月に第1作が発売されたRPGシリーズ。昔ながらのドット絵に3DCGの画面効果を加えた「HD-2D」のグラフィック表現が特長。属性や背景の異なる8人の旅人が主人公となり、それぞれのストーリーを体験する。
※61998年に第1作が発売されたアクションゲームシリーズ。プレイヤーは忍者となり、敵に見つからないよう暗闇や物陰に隠れながら進む。敵の隙をつき、一撃のもとに葬り去る必殺アクションが特長。
大谷さんの訪問を受けたアクワイアさんは、どのように反応されたのでしょうか。
そうですね。
任天堂さんとのお仕事は僕個人としても興味がありましたし、 アクワイアとしても一緒にお仕事ができるなら 技術的なところやゲームのつくり方、 いろんなことが学べるんじゃないかということで、 ぜひ一緒に、という話をしました。アクワイアさんは任天堂と一緒に開発を進めるのは、これが初めてだったのでしょうか。
ちゃんとゲーム開発のお仕事をするのは今回が初めてです。
でも、お話をいただいて、 「そんな未来もあるのか・・・!」って思った瞬間に いろいろ興味がわいてきて、 これは面白いことになりそうだぞ、って思いました。
アクワイアさんは先ほど話に出た『天誅』など、少しとがった、特徴のあるゲームをオリジナルでつくってこられたように思います。他社のキャラクターのゲームをつくることは、あまりなかったですよね。
そうですね。
これまで基本的にはアクワイア側から企画・立案させていただいて 「これを一緒につくりましょう」とパートナーに提案する形式がほとんどでした。 今作は、自分たちで積み重ねたものがない中でつくる、ということなので やっぱり大変でしたね。アクワイアさんが手掛けられたタイトルとしてお話に出ていた『OCTOPATH TRAVELER』は、2Dと3Dの中間のような「HD-2D」のグラフィック表現が特長です。大谷さんがアクワイアさんに話を持っていったとき、そうした表現の方向性も想定にあったのでしょうか。
『OCTOPATH TRAVELER』のようなHD-2Dの方針も、
ただ、「マリオ&ルイージRPG」って、 これまでゲームはドット絵で、パッケージなどのアートワークは イラストで描かれてきたんですね。
ほかのマリオのゲームだと、
いつかゲームとアートワークを一致させたいとは思っていたんです。 だから、次は3Dでつくりたいという夢を持っていました。
僕も企画段階から
僕は『勇者のくせになまいきだ。』※7という ドットキャラクターが動くゲームをつくった経験があるんですけど、 そんなドットアニメーション経験者から見ても、 これまでの「マリオ&ルイージRPG」のドットアニメーションって 本当にすごいんです、技術的にもセンス的にも。
あれと同等、それ以上のものができるかというと ちょっと簡単じゃないだろう・・・と。
であれば、3Dで「マリオ&ルイージRPG」を表現するっていう チャレンジをした方が、これまでのシリーズ作にはない 新たな魅力をたくさん盛り込めると思ったんです。
※72007年に第1作が発売されたゲームシリーズ。プレイヤーは魔王を守る破壊神となり、ダンジョンの中に魔物の生態系をつくって、侵入してくる勇者たちを倒す。ドット絵で描かれる世界が特徴的。
なるほど、今作を3Dでつくりたいという思いは最初から両社の間で一致していたんですね。