開発者に訊きました『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』 企画制作部第4プロダクションG 手嶋 宏介 企画制作部第4プロダクションG 益田 直生

2021.6.10

アクリル板とマスクを使用して感染症対策を行い、十分な距離を保ってインタビューをしています。

ひっくり返したらどうかな?

任天堂のものづくりに対する考えやこだわりを、
開発者みずからの言葉でお伝えする
「開発者に訊きました」を始めるにあたり、
『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』の
開発に携わった二人に話を訊いてみました。

まずは簡単に自己紹介と、
これまでに担当したお仕事について話してもらえますか?

益田

『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』の
ディレクター兼プログラマーの益田です。
以前は『Nintendo Labo』※1シリーズの
仕様検討やプログラム開発を担当していました。

※1ダンボールとNintendo Switchを組み合わせ、ピアノやバイク、ロボットなど、いろいろなコントローラー(=Toy-Con)を作ってあそぶことができるゲーム。「VARIETY KIT」「ROBOT KIT」は2018年4月20日発売。

手嶋

手嶋です。
私はサブディレクターとして、
ナビつきレッスンの取りまとめを担当しました。
直近では、『Nintendo Labo』の「わかる」※2
テキストを作成していました。

※2『Nintendo Labo』のモードの1つ。Toy-Conの仕組みを理解することで、新しい遊びを発見することができる。

ありがとうございます。
では、まずは今回のソフトについて軽く紹介いただけますか。

益田

はい。
『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』は、
画像ノードンという不思議な生き物をつなぐだけで
簡単にプログラミングを楽しめるソフトです。

プログラミングを難しいと感じる方でも、
丁寧なナビと、このノードンを通して
プログラミングがわかっていき、
最終的には自分でゲームがつくれるようになります。

このソフトの企画は、どんなきっかけで始まったのでしょう?

益田

『Nintendo Labo』の4つ目のVRキットの開発が終わった後に、
VRキットの中に含まれていた
画像Toy-Con ガレージVRを切り出して、
一つの商品にできないかと考えていました。

Toy-ConガレージVRは、
一通りVRのToy-Con作りを理解した後に、
お客さまご自身のアイデアで、
VRを生かしたオリジナルゲームづくりを
楽しんでいただくようなものでしたが、
VRに限らずそこをもっと広げてみようと思ったんです。

それは、Toy-Con ガレージで
何かやり残したことがあったからですか?

益田

いえ、やり残したことがあったということではなく、
違う見せ方ができるのではないかと可能性を感じていたんです。
VRキットのToy-Con ガレージは、
『Nintendo Labo』の中でも最後の最後の応用コーナーで、
当初はほんの一握りの人でもそこへたどり着いてくれたら
いいな、くらいの気持ちでした。

でもToy-Con ガレージのコンテストを開催してみて、
お客さまがToy-Conガレージでつくられた
オリジナルゲームの中に、
手応えを感じる面白いゲームが
たくさんあることを知って、
これを「ほんの一握りの人」だけじゃなくて、
もっとたくさんの人にゲームをつくる楽しみを
体験していただきたいと思ったんです。

試行錯誤をしながらゲームをつくる楽しみを、
もっと気軽に楽しんでもらえないかなあ・・・
とも考えていました。

手嶋

『Nintendo Labo』の開発チーム内でも、
普段プログラミングをしないデザイナーさんたちが、
Toy-Con ガレージを使ってゲームをつくってくれました。

ゲームのつくり方が途中でわからなくて
立ち止まってしまった時は、
Toy-Con ガレージを開発した益田さんに聞きに来たりして、
それでだんだん理解して
つくれるようになっていって・・・
当時は益田さんがなんでも質問を解決してくれる、
いわば「お助け役」みたいになっていましたね(笑)。

益田

デザイナーさんたちからの質問を受けたり、
コンテストでお客さまがつくられたゲームを見たりして、
このToy-Con ガレージはやはり面白いものだと
改めて思うようになりました。

でも、Toy-Con ガレージでの「つくり方」を
もっと丁寧に伝えられたら
この面白さをもっと広げられるかもしれない、
と気づいたんです。

つまり、Toy-Con ガレージの課題は「つくり方の説明」の部分で、
それを解決するのが今回の目標だったということですか?

益田

そうですね。『Nintendo Labo』はダンボールの
Toy-Conをつくって遊ぶことで、
まずハードの仕組みを理解して、
さらにその応用として、
ほんの一部の方がToy-Con ガレージを使った
オリジナルゲームの発明までたどり着けるというものでした。
でも、デザイナーさんたちの「お助け役」として
いろんな質問を受けている中で、
この順番をひっくり返したらどうかな?
と思ったんです。

つまり、『Nintendo Labo』では
ハードの仕組みの理解からスタートして、
最終的にソフトづくりにつながっていました。
ですが、『はじめてゲームプログラミング』では、
ソフトづくりを入り口にして、
プログラミングを先に体験していただこうということです。

『Nintendo Labo』には「つくる」という
「世界一“イケてる”」と思っている
組み立て説明書がありましたが、
そのノウハウをプログラミングでの「つくる」にも
応用したい、と考えたんです。
そうすれば、『Nintendo Labo』とはまた違った角度で
「つくる・あそぶ・わかる」を
楽しんでいただけるんじゃないかと思いました。

そういう考えで、『Nintendo Labo』では
最後にたどり着くはずだったソフトづくりの部分を、
前に出したということですね。

手嶋

はい、それで益田さんがデザイナーさんたちの
「お助け役」になったように、
説明(ナビ)があると、
きっとその可能性をもっと楽しんでいただけるはず!
と思いました。

じゃあ、「ナビつき!」の「ナビ」は益田さん・・・?

手嶋

はい、あれは益田さんの分身とも言えますね(笑)。

となると、その益田さんの分身とも言えるナビが気になりますが、
「ナビつき!」のナビとはどんなものなんですか?

手嶋

具体的には、このソフトのメインである、
ノードンを使ったゲームプログラミングが楽しめる、
動画7種類の「ナビつきレッスン」のことになります。
ナビでゲームの完成を一からサポートします。

実際、どこまでナビをしてくれるんでしょうか?

手嶋

ボブという説明キャラクターが出てきて、
それこそ一から十まで、手取り足取り教えてくれます。
プログラミングにはノードンというキャラクターを使うのですが、
「ノードンをここに置いて」とか
「このノードンとこのノードンをつないで」とか、
動画ボブがプレイヤーの操作に合わせて画面上を移動しながら、
最初から最後まで細かく教えてくれる
んです。

なるほど、
それなら初心者でもゲームを完成できそうですね。
ちなみに、小学生でもプログラミングを楽しめたりするのでしょうか。

益田

プログラミングに興味がある小学生のみなさんに
開発段階のものをやってもらいました。

反応はどうでしたか?

益田

手応えがありました。
その場では実際に、ゲームが完成するところまでやってもらえました。
「やってもらえた」というより、
もう小学生たちの勢いがすごくて・・・(笑)。

手嶋

「次!次!」という感じで、
その日に用意したモニター用のレッスンだけでは満足してもらえなくて、
開発途中の未公開部分のレッスンにまで
入られてしまって困りました(笑)。

益田

集中力がすごかったです(笑)。

(笑)。

手嶋

ほかにも、小学4年生の方は、
ナビつきレッスンの先のフリープログラミングで
自分なりのゲームづくりまでしてくれたので、
「これはイケそうだな」と実感しました。

なるほど、実際に小学生でも
つくれることが実証されているわけですね。

手嶋

もちろん個人差はあります。

その個人差は、ナビが埋めてくれると思って大丈夫ですか?

手嶋

はい。「ナビつきレッスン」は小学1年生でも
楽しみながらゲームを完成させられる、
というものなので。

それだけでなく、
レッスンで出てきた仕組みやノードンのことを、
より詳しく教えてくれるモードもありますし、
もっとやりたい方はフリープログラミングに挑戦できますので、
楽しみ方の選択肢があることが、
いろんな個人差を埋めてくれるんじゃないかと期待しています。